【地には平和】
2013クリスマスメッセージ         ルカによる福音書2章1~20節
                                  
 今、絵本『せいなるよるのたからもの』(クドウう著 新教出版を<ののはな>の人たちに読んでもらいました。出生前診断がテーマとしてとりあげられていました。

 マリア、ヨセフは戸惑いながらも天使を通して語られた神の言葉を信じ、マリアはイエスを産む決心をします。わたしたちはこの二人の決断がどれほど大きなことであったのか、知ることは出来ません。ルカはいいます。「マリアは月が満ちて、はじめての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には泊まる場所がなかったからである。」(2・6)臨月の妊婦が誰からも気にとめられず、家畜小屋での出産を余儀なくされたのは「泊まる場所がない」という理由ですが、それがどのようなことを意味するのか、想像してみて下さい。そしてこの誕生に駆けつけたのは、羊飼いたちでした。危険、汚い、きついといわれる3kの仕事です。そしてその後に登場するのが、東方から来た占星術師(マタイ2・1~12)です。彼らはいずれも尊敬される人たちではありません。そのような人にイエスの誕生が知らされ、彼らはその誕生を心から喜んだのです。そしてそれぞれ自分たちの場所へと帰っていったと、書かれています。

 私たちは、この物語をクリスマスの物語として知っています。どうして、それが私たちの喜びのメッセージとなるのでしよう。姜尚中とナウエンの推薦文に惹かれて『涙とともに見上げるとき』-亡き子を偲ぶ哀歌-(ウォルターストーフ いのちのことば社)という本を読みました。愛する者を失った心の叫びが素直に書かれています。「苦難とは何であろうか。大切にしているもの、愛しているもの、…仕事やあるいは自分の価値を認めてもらうこと、肉体的な苦痛のない人生、といったもの…それがはぎ取られ、あるいは決してかなえられないとき、それが苦難である」という言葉に引きつけられました。私たちは、あの3.11以来、平和とはほど遠い日々を過ごしています。ここで羊飼いたちが聞いた天使の言葉「平和」は、平安・安らぎと訳されている聖書もあります。別の言葉で言えば、安寧を得るということです。私たちの人生には、必ず試練が襲いかかります。その試練・苦難は人によって違います。けれども、私たちはその「試練・苦難」を受けとめ、共にいて下さり、勇気をお与えになる方を知っています。そのお方は、インマヌエルの神として、悲しむもの、苦しむ者の今も傍らにいて下さるお方なのです。だからこそ、私たちは素直に「どうして…」ということが言えるのです。不条理を不条理として。

 今日はクリスマス礼拝です。「救い主」イエスの誕生を心から祝う日です。あの世界で最初のクリスマスの証人となった羊飼い、そして東方から星に導かれて遙々やって来た占星術師たちのように、この礼拝を通して、どんなにつらい境遇であっても生きる勇気があたえられていることを神さまに感謝しましょう。そしてインマヌエルの神が天使を通してマリアとヨセフに語りかけられたように、今も語りかけておられます。すべての人の心にかけられている声に…対して、私たちは、どのように応答しますか。ひとりひとりがそのことを心に留め、このクリスマスを心からお祝いしましょう。メリークリスマス!