【地には平和】
クリスマスイブ礼拝メッセージ               


 今年の漢字一字は「令」が選ばれました。第5位は「災」が選ばれています。温暖化による影響だと考えられている異常気象が日本に大きな被害を齎しました。台風15、19号で被災に遭われた人たちは、今なお、厳しい生活を強いられています。ある人は今の時代を「生きづらさ」と表現しています。自らいのちを断つ人は二万人を越え、7人の一人の子ども、5人に一人の高齢者、シングルマザーの三人に一人がが「貧困」状態にあると言われています。パワハラ、セクハラなどのハラスメント被害者報道が連日のように報道されています。消費税が上がったことで、消費は冷え込み、家計は益々厳しくなっています。多くの非正規労働者の生活は逼迫しています。

 「救い主」イエスが誕生した時代、パレスチナ地方に住むユダヤ人はローマの支配下にあり、ローマは「力」(軍事)によって世界秩序を保とうとしていました。そのような中で、力のないもの、病に苦しむ人たち、障がいのある人たちは抑圧され、差別に苦しめられていました。

 イエスはそのような時代に誕生されたのです。母マリアは天使によって妊娠を告げ知らせられます。夫となるヨセフはマリアの妊娠に困惑し、天使が夢にあらわれてその意味を伝え、若きカップルはその妊娠を受け入れ、産む決心をし、皇帝アウグストゥスからの勅令によって住民登録をするため、故郷ナザレからベツレヘムへ旅をし、そこで「救い主」イエスは誕生します。

 しかし、その場所は「家畜小屋」でした。最初に誕生を知らされたのは卑賤の職業とされていた「羊飼い」たちでした。ルカはその誕生した場所に注目するようにわたしたちに促しています。「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。」と、場所がない。(ルカによる福音書2章7節)すなわち「居場所」がなかった。

 羊飼いたちは野宿をしていたと記されています。暖をとる部屋もなく、風呂にも入れず満足な食事も出来ないような境遇にあるのが羊飼いでした。そのような「小さくされた人々」に福音(よきおとずれ)として「救い主」の誕生が知らされたのです。

 今、わたしたちはこの場所に集められ、「救い主」の誕生を待ち望む、クリスマスイブを迎えました。

 アウグストゥスをはじめとするローマ皇帝は「力」による支配、すなわち軍事力でローマの平和を維持することを目指しました。しかし、イエスの誕生はそのような力による平和は真の平和ではないことをわたしたちに伝えています。

 真の平和とは、戦争がない状態ではなく、困窮している人たち、様々な苦しみの中にある人たちが安心して暮らせる。すなわち、「生きづらい社会」ではなく、誰もが「生きていてよい」と考えられる社会です。地球温暖化、気象以上、格差、様々な暴力、いじめ、ハラスメントがない社会こそが、真の平和です。

「救い主」の誕生はわたしたちにそのことを伝えています。メリークリスマス!