【わたしはここにいる】
 アドベント第1主日メッセージ 
イザヤ書52章1~10節・ヨハネ福音書7章25~31節 

 ローマ教皇フランシスコの東京ドームのミサには5万人の人たちが集まりました。そこにはクリスチャンだけではなく、曹洞宗の僧侶たちもいました。実際はその15倍の人たちが応募しました。

 カトリック神父の友人にミサに行きたいが・・・と言うと、即座に「無理」との返答が帰ってきました。38年ぶりに教皇が来日することを新聞は特集で伝えました。広島・長崎の原爆地を訪れ、被災者の声に耳を傾ける。東京では福島第一原発事故で避難を余儀なくされている人たち、自主避難をしている人たちの集会に出席し、高校二年の鴨下全生(まつき)さんの話しを聞いて彼を抱擁する姿が、テレビに流れました。

 また静岡地裁が「無罪」判決を出したのに、検察が上訴したことで、最高裁でさし戻しが決定した袴田 巌さんも東京ドームのミサに出席したことが、報道されました。

 核兵器廃絶、原発反対、死刑廃止、環境保全などを訴えたフランシスコ教皇は日本に大きなインパクトをあたえ、帰国しました。

 カトリック教会の最高指導者、ペトロの天国の鍵を(マタイ16章19節)継承しているとされるのが、教皇です。フランシスコはアルゼンチン出身で、イエズス会から初めて選ばれました。本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリがなぜ、フランシスコを名乗ったのかは大きな意味があります。その名ですぐに思い浮かぶのは12世紀に自然を愛し、小鳥にも説教したという逸話で知られているアシシのフランシスコです。無所有を主張し、後にフランシスコ修道会を創設した人です。もう一人はイエズス会から派遣されて日本に宣教師としてやって来たフランシスコ・ザビエルです。

 賀川豊彦がクリスチャンとなり、その後神さまの導きで神戸のスラム葺合新川に入り、そして関東大震災の窮状を聞きつけ、東京で救援活動をし、関西にイエス団、東京では雲柱社を創設します。賀川は大変な読書家で、6万冊の本を読んだと言われていますが、その中にはジョン・ウエスレー、そしてアシシのフランシスコの伝記もありました。

 今日の箇所は、イスラエルの民の苦難が語られています。奴隷からの解放を願って出エジプトをします。その後、自分たちの国イスラエル王国を作りますが、最初に北イスラエル王国がアッシリア帝国に侵略され、やがて南ユダ王国もバビロンに滅ぼされ、バビロンに捕囚されてしまいます。そのようなバビロンからの解放がイザヤ書40章以下に語られます。52章にもその解放のメッセージが語られています。6節の言葉に注目して下さい。「『見よ、ここにいる』と言う者であることを知るようになる。」もう一つの箇所には「あなたがたは知っている」(ヨハネ福音書7章28節)とあります。

 今日からアドベントに入りました。この期間、わたしたちはクリスマスを迎えるための準備をします。

 クリスマス、それは解放の物語です。虐げられた民が、解放されるというメッセージがクリスマス物語にはちりばめられています。

 賀川豊彦は、自分のマルチ的な才能を神さまに献げ、生涯伝道者として生きました。そしてその人たちに共通するのが、他者への眼差しです。フランシスコ教皇の「人とともに涙を流せること、それが聖である」という言葉を思い起こし、「わたしは、ここにいる」という聖書のみ言葉を心にとめましょう。