【新しい道】
マタイよる福音書2章7~12節


 2017年が終わろうとしている。30日の「朝日新聞」には「2017年 あの日 我々は」と題して、この一年間の「出来事」が記されていた。「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプが米国大統領に就任して1年が過ぎようとしている。彼は「パリ協定」からの離脱を表明し、TPP、そしてユネスコ(国連教育科学文化機関)を18年末に脱退することを発表している。そして12月21日にイスラエルの首都をエルサレムに、そして大使館をエルサレムに移す準備に入ることを表明した。

 北朝鮮の核の脅威を強調し、軍備増強を日本にも強いている。そして専守防衛の歯止めがきかぬ状態に陥ろうとしている。(憲法9条で果たして専守防衛の範囲は何処まで許されるのかも曖昧なまま、米軍基地の約70%が沖縄に集中している。)そしてトランプ氏に代表される第一主義、排外主義、排他主義が世界を覆い尽くした1年であったといっても過言ではない。

 そのような中で、戦前に書かれた吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」が、漫画として多くの人々に読まれている。書いたのはイラストレーターの羽賀翔一である。この本が漫画として出版されたことには大きな意味があると思った。

 先週わたしたちは、クリスマス礼拝を献げることが出来た。占星術師は星に導かれ、最初にヘロデの所に赴き「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその星を見たので、拝みに来ました」という。しかしその知らせはヘロデの所にはもたらされてはいない。ヘロデはうろたえた。その場所が聖書(ミカ5・1、サムエル下5・2)にあることを彼のブレーンによって知る。占星術師はヘロデの所を立ち去り、再び星に導かれ、「救い主」イエスに出会う。彼らはひれ伏し、黄金・乳香・没薬を献げる。これらの献げ物は彼らの商売道具であった。

 そしてヨセフが夢でイエスの誕生を知らされたように、占星術師は夢で「ヘロデの所に帰るな」と告げられ、別(ほか)の道を通って自分たちの国に帰ったと記されている。ヘロデに象徴されるのは権力である。そしてそれは力である。独裁者は自分を神格化されることを好む。自分が特別な存在であることを固持する。ヘロデとその仲間(エルサレムに住む人)たちは、新しい王は自分の座を奪うものとしてその息の根を絶とう考え、その結果悲劇が起きたことを記している。(2・16~18)

 共生は優生思想からは生まれない。第一主義の行き着くところはどこなのだろう。自国第一主義を強国が主張すれば小国は切り捨てられることになる。聖書には占星術師は「別の道」「他の道」を通って自国に帰ったと記す。今日の宣教題を新しい道とした。新しい道はイエスに通じる道である。80年前に書かれた「君たちはどう生きるか」がなぜこんなに注目されるようになったのだろう。様々な価値観を受け入れ、ともに歩む。わたしたちはその道をイエスによって示されている。飼い葉桶からはじまるその道は十字架に至る道である。その道を進もうとすれば、おのずからこの世の価値観からズレてくる。しかしそのズレ(空気を読まない)を受け入れることが大切だ。2018年がどのような年となるのだろう 。