2017年2月
             真実を見る眼、行動する勇気

                                            
                      堀切教会牧師 真鍋孝幸
 トランプ政権となって2週間が過ぎた。矢継ぎ早に「大統領令」を連発し、分断は激しさを増している。彼が就任演説で語った「忘れ去られた人々」は多民族、多人種で多様性を認めるアメリカではなく、白人で「格差」の中で厳しい生活を強いられている人、LGBT(性的少数者)や様々なマイノリティーの人たちを認める社会に対して「このままではアメリカはダメになる。」という保守層の人たちがトランプを支持していると言われている。

 しかしリベラルな考え方の人たちは、痛烈に彼を批判している。ハリウッドのスターたちやニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNAなどのマスメディアはトランプ政権に対して批判を強めている。

 真実な報道とは何か?何が真実で、何が恣意的な偽証報道なのか、自分で判断するリテラシー(識別能力)が求められている。

 「朝日新聞」は三回(1/18、1/28、2/3)にわたってMXテレビ「ニュース女子」の沖縄の高江に対しての恣意的な敵意に満ちた偏向報道を取り上げている。1月2日の放送で、軍事ジャーナリストの井上和彦氏が現地の様子をろくに取材もせずに報道した。しかしその報道は沖縄の人々を悲しませ、怒らせた。収拾を図るため、東京新聞は2日付けの朝刊で「反省」を表明する。この番組の司会者は東京新聞の論説副主幹長谷川幸洋氏である。

 「在特会(在日外国人の特権を許さない市民の会)」のありえぬ主張も疑問を持ち自分で考え、調べなければ嘘も本当になってしまう。とすればこのような虚偽に満ちた偏向報道で、反対派によって「彼ら・彼女たちは日当5万円で雇われている。」、「救急車を止めて現場に急行出来ない事態が続いている。」という嘘がまことしやかに語られ、ある人たちはその報道を鵜呑みにしている。その結果、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムが起こらないようにと、願うばかりだ。

 私たちはデマがまかり通ることを歴史を通して知らされている。関東大震災の時に「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ。」というデマがながされその結果、無実の人が処刑され、多くの「在日」の人たちがいのちを奪われた。

 このようなデマが真実となり、意図的にそのドラマが作り上げられると、その事が真実になり、敵に対しては激しい憎悪が正当化される。

 真実を見る眼を私たちが身につけることは容易いことではない。時流に流され、空気を読んでしまう人たちにはそのような眼で事実を観ることは難しい。

 聖書には沢山の預言者が登場する。預言者は権力におもねることなく、時には権力と抗って、自分を賭して真実を祈り求め、その道が真実であると信じるならば一人になってもその真実を人々に語る。

 「頑迷預言」ということばがある。イザヤ書にはこのような言葉がある。「行け、この民に言うがよい よく聞け、しかし理解するな よく見よ、しかし悟るな、と。この民の心をかたくなにし 耳を鈍く、目を暗くせよ。目でみることなく、耳で聞くことなく その心で理解することなく 悔い改めて癒やされることのないために。」イザヤはヤハウェ(神)に問う「いつまででしょうか。」「町々が崩れ去って、住む者もなく、家々には人影もなく 大地が荒廃して崩れ去る時まで。」(イザヤ書6章9~11節)

 イザヤの言葉を人々は受け入れない。エレミヤの言葉も人々は受け入れない。真実の目で世界を見つめていた彼らを人々は拒否する。

 私たちは真実を見る眼(リテラシー)を身につけたい。そして真実を語る者として歩みたい。