2018年 2月   戦争を知らない世代は想像力がなければ退場してほしい


                        堀切教会牧師 真鍋孝幸
 野中広務さんが92歳でこの世を旅立ったことをNews23で知った。魚住 昭の「差別と権力」で彼の出自を知った。
 自身の激烈な差別体験の中で政治家野中広務は誕生した。痛みを負った人だからこそ、苦しみ、差別される人の側に立つことが出来たのだろう。「国旗・国歌法案」を取り決めた野中広務。

 「部落差別」「在日」「ハンセン病」「沖縄」に思いを寄せる政治家野中広務。剛腕を発揮しながら、権力者として道をひたすらに駆け昇った野中広務。一方で「在日」辛 淑玉と対談し、自身の出自を語り「差別」される人の悲しみと怒りを語った彼の言葉に、政治信条は180度違うが共感した。彼は今の政治情勢をどのように捉え、憂いていたのだろうか。

 映像には自民党の重臣である彼が「日本国憲法」を改憲することには反対とはっきりと発言していたことが映し出されていた。

 「自民党の憲法改正は党是である」と言い放つ安倍首相の発言は彼の言葉とその眼光鋭い視線を無視しているから出来る発言なのだろうか。米国トランプ政権支持をいち早く表明し、その結果、株価は2万円を突破した。けれども世界終末時計の針は進んだ。

 「北朝鮮」への「圧力」は「拉致」された家族の痛みが怒りとなってのことなのだろうか。未だ家族の願いは適えられず、拉致家族は無念を抱いたままこの世を旅立つ現実の中で、「目には目を、歯には歯を」という論理で防衛費(軍事力)を増大させ続けている。偶発的な戦闘行動が「戦争の引き金」となると考えるのはわたしだけなのだろうか。

 沖縄の痛みには全く共感しないままの無干渉で、米軍のヘリコプターの度重なる不時着、窓枠落下事故は重大なインシデントを引き起こす懸念を米国トランプ大統領に伝え、直ちに事故原因の究明とそれが証明され、沖縄県民が納得するまで飛行中止を申し出たという報道は聞かない。

 米軍が「北朝鮮」に対して軍事行動に出た場合は事前相談をするというが、そのような行動をとると米軍が表明した場合、安倍政権は「否」と国民の生命と安全を守るために袂を分かっても「自国」の利益を信念を持ってトランプ大統領に対して苦言をいうことが出来るのだろうか。

 「折々のことば」1/25には元中国大使の丹羽宇一郎が近著「戦争の大問題」で田中角栄の次のような言葉が紹介され、戦争を知らない世代の政治家に対する懸念が書かれていた。

「戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もない。」「だが、戦争を知らない世代が政治の中枢となったときはとても危ない」と説く。元総理は新人議員たちにこう語った。「(戦争への一線を)跨ぎ越してはならない。線がどこかを教えるのは、体験の重しである。」丹羽の引いたこのことばは、雑誌「通販生活」本年号の表紙も飾っている。(鷲田清一)

 通常国会がはじまった。野党議員の代表質問に対して「それで何人が死んだんだ」とヤジを行い、引責辞任に追い込まれた内閣府副大臣松本文明衆議院議員に対して、記者団からコメントを求められたが首相は何も語らなかったことが放映されていた。

 聖書を通してイエスの振るまいを知るわたしは、痛みを知らないものは共感、ましてや共苦することはない。想像力の欠如は国益に反すると考えることが、それは間違っているのだろうか。